送り状作成・印刷の自動化

顧客と注文情報からワンクリックで送り状PDFを生成し手作業を削減。ドットプリンタ調整や運送会社自動振り分けにも対応。
手作業から完全自動化へ:1 シーズン 500 枚以上の送り状を自動印刷
はじめに
全国へ美味しい梨を発送している梨屋さんでは、年間を通じて 3kg 箱・5kg 箱入りの梨を多くのお客様に届けています。ところが従来の送り状作成はすべて手作業で行っており、多くの課題を抱えていました。今回は、それらを解決するために導入した「送り状作成・印刷の完全自動化システム」についてご紹介します。
導入前の課題
梨屋さんが直面していたのは、中小企業にありがちな「手作業の限界」でした。
膨大な手作業による非効率
1 シーズンあたり 500 枚以上の送り状を、すべて手書きで作成していました。繁忙期には膨大な時間を送り状作成に費やさざるを得ませんでした。
特に、住所や電話番号といった長い文字列を正確に書き写す作業は、時間も労力もかかる大きな負担となっていました。
書き間違いによるロス
送り状は複写式用紙を使用していたため、一度でも書き間違えると修正が難しく、最初から書き直しが必要でした。これにより、用紙の廃棄や作業時間の増加が避けられませんでした。
運送会社の使い分けによる煩雑さ
梨屋さんでは、発送先や商品の特性(クール便の要否など)に応じて、佐川急便とヤマト運輸を使い分けています。それぞれの送り状書式が異なるため、手作業では「どの用紙を使うか」の判断が人に依存していたのです。その結果、判断ミスやルールの見落としも発生していました。
システム導入の決断
こうした課題を解消するため、梨屋さんでは送り状作成を完全自動化するシステムを導入しました。目標は明確でした。
- 作業時間の短縮:手書き作業をなくす
- ミスの排除:書き間違いや判断ミスを防ぐ
- 品質向上:常に正確で読みやすい送り状を出力する
システム設計のポイント
シンプルな操作性
「ワンクリックで完結」をコンセプトに設計。パソコンに不慣れなスタッフでも直感的に使えるシステムを目指しました。
注文の管理機能
- 商品・箱数・配送先の確定
- 発送予定日の管理
- 持ち帰り予定の管理
これにより、見込み客から確定注文までを漏れなく追跡できるようになりました。
自動化の仕組み
ステップ 1:お客様情報の入力
- 既存のお客様:名前や電話番号の一部を入力するだけで、過去の履歴から瞬時に呼び出し
- 新規のお客様:郵便番号を入力するだけで住所の大部分を自動補完
- 複数の送り先対応:「自宅用」「会社用」「ギフト用」などを保存して、次回以降は選択だけで利用可能
ステップ 2:商品・配送情報の入力
- 梨の品種を選択(収穫時期に応じて自動絞り込み)
- 箱サイズや数量を入力
- 発送か持ち帰りかを選択
- クール便の有無を指定
自動チェック機能により、注文数やクール便の可否、料金計算に必要な条件を自動で確認します。
ステップ 3:運送会社と料金の自動決定
入力内容からシステムが最適な運送会社を自動選択。九州本土なら佐川急便、それ以外ならヤマト運輸など、条件ごとに振り分けられます。料金も瞬時に計算され、人的な判断ミスを防ぎます。
ステップ 4:送り状 PDF の自動生成
「送り状作成」ボタンを押すだけで PDF が生成されます。運送会社ごとに適切な書式が適用され、バーコードや追跡番号も自動付与されます。
印刷システムの最適化
ドットプリンタ採用の理由
複写式用紙への印刷に対応するため、OKI MICROLINE 6300FB2 のドットプリンタを使用しました。
- 下の紙まで鮮明に印字可能
- 業務用設計で大量印刷に強い
- 幅広い用紙サイズに対応
用紙設定の工夫
事前に寸法や印字領域を測定し、システムに登録。これにより、常に正確な位置に印刷できます。
まとめ
梨屋さんの送り状作成・印刷自動化システムは、効率化にとどまらず事業全体の競争力向上に大きく貢献しました。
成果
- 作業時間を大幅に削減
中小企業 DX の成功例として
この事例は「IT 導入は大企業だけのもの」という固定観念を覆し、中小企業でも実現可能な DX の成功例といえます。
重要なのは最新技術そのものではなく、現場の課題を正しく把握し、最適なシステムを構築することです。
梨屋さんの取り組みが、同様の課題を抱える方々の参考になれば幸いです。